2010年7月発行機関紙 No.009

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知的障がい児の外出支援(ガイド)や見守りの仕事をして感じたこと

思いもよらいない発見

コミュニケーションが取りにくく、動きも予測できない子どもと、1対1で過ごすことがどんなことなのか、仕事をするまで想像出来ませんでした。歩行中や電車のホームでの安全確保、意志の伝達ができるのか心配でした。先生でもなく、お母さんでもない、本人の意思に沿った見守り…何ができるのか不安でした。でも、2人で一緒に過ごしていくうちに、思いもよらない発見がありました。

視線の先や、興味を持って聞き入っている音、じっとせず絶えず動くことなどを、一緒に見たり、聞いたり、動いてみると、おもしろかったり、心地よいことがありました。公園に行く途中嫌そうな表情になり立ち止まった時、帰ろうか?と声かけすると、泣きそうになりながら歩きだすので、どうしたいのかわからず困ったこともありました。そんな時は、自然とこちらも困った顔になり、「嫌なら行かなくてもいいのにな~」とブツブツ言いながらついて行きました。子どもたちと一緒にいると、同じように自分の気持ちが表情に出てしまい、そのおかげなのか楽になり、無理せずゆったりとつきあえるのです。

個性としてつきあえる

こうなってくると、今日はどんなことがあるか楽しみにガイドできるようになりました。

かばんのファスナーが開いているのを閉めてくれたり、リュックの肩ひもがずれているのをそっと直してくれたりします。顔をハンカチで拭いてくれることもあります。落ち葉をすくって落とすことが好きな子は、春に桜のはなびらをすくってひらひらと散らし、素敵な景色を作ってくれます。暑かったり寒かったり風が強かったりした時に、一緒に乗り越えて、こちらが勝手に仲良くなった気になったりもします。激しい動きでハラハラさせながらもごみを捨てたりテーブルを拭くことに感心したり…。毎回新しい発見があります。個性豊かなことに驚かされ、声を出して笑ったり、喜んだり…。1対1であることで、障がいのあるなしに関わらず、個性としてつきあえる気がします。

困ったとき、迷ったとき

でも、いつも楽しいことばかりではありません。急にたたかれたり、髪を引っ張られたり、つねられたりすると、痛いし腹が立ちます。冷静に声かけするように努めますが、なかなか難しく、大きな声で「痛いっ!やめてっ!」と感情的になってしまうこともあり、自己嫌悪にもなります。また、悪気なく物を投げたり、残っているお茶を捨ててすぐに買ったり…。本人にとっては楽しみやこだわりであっても、社会のルールからは外れてしまうことがあります。このように困ったとき、迷ったときは、お母さんにその様子を聞いていただきます。お母さんと話していると関わり方のヒントをもらえるので、ヘルパーとしてできることは何かを事業所に相談し、本人の様子を見ながら関わっていきます。子どもたちはゆっくり自分のペースで成長していくと思うので、焦らず、危険なことがないように気をつけながら見守るようにしています。

地域の人たちにも見守られ

2人きりの外出ですが、私だけでなく、子どもたちに関わってくれる地域の人たちもいます。

公園で落ちている枝を拾っては折っていると「楽しそうやな~」と声をかけてくれるおじさん、周囲に迷惑をかけると思いおろおろしている時に、その子に向かって「大丈夫やで」と言ってもらい、安心したこともありました。お店で注文するときに、なかなか返事がなく困っていると、お店の人が「ゆっくり決めたらいいよ」「こっちが好きかな?」など、ヘルパーと同じような声かけをしてくれたこともあります。熱い飲み物をテーブルにこぼしてしまった時、以前からよく注意されていた掃除のおばさんが近づいて来たので、怒られる!と思ったら、一緒に拭いてくれました。地域の人たちにも見守られていると思います。

子どもたちはコミュニケーションが取りにくいため、生活していくうえで様々な支障はありますが、周囲の人たちの理解や工夫で暮らしやすくなると思います。そのためには、知っていただくことも大切なので、学校や家庭だけでなく、地域の人たちと関わりを持つ機会が増えることを願います。子どもたちが良いことをしたらほめてくれたり、喜んでくれたり、危ないときやまちがったことをしているときには声をかけてもらえたら、外出しやすくなると思います。

一番大切な安全確保をしながら、動作や表情のサインを見て工夫して関わっていきたいです。少しずつ自分のペースでできることが増えていくことを近くで見守れることは、とてもうれしくやりがいを感じます。体力の続く限り、子どもたちと関わらせてもらいたいと思います。迷惑のかからないように地域の人たちを巻き込んで、ガイド、見守りをしていきたいです。

浜脇 由紀

ヘルパー研修報告

5月15日、利用者2人と介助者12人が集まり、介助研修を行いました。

その内容は、

  1. 機能低下防止体操
  2. 口腔ケア
  3. 補装具装着方法
  4. 話し合い

です。

(1)機能低下防止体操

筋力の低下や緊張が進み、安定した姿勢や動きがとりにくくなっている脳性マヒの利用者に、機能低下の防止の体操を一日の生活の中に何度か組み入れるように、理学療法士より指導を受けました。この体操を、介助者と利用者が一日の生活の中で協力しあって実施していけるよう、実技研修をしました。 具体的には、朝の起床前に股関節、足関節を動かす、体側を伸ばす、風呂上りに下肢屈曲位を保つ、昼間1時間ごとに車椅子上のずれた姿勢を元に戻すなどを行います。 この体操は筋力アップが目的ではなく、筋を伸ばして緊張をほぐすためのものです。そのため介助者は、利用者の身体の反応、曲がりにくい抵抗感など感じながら、こなすだけの体操にならないよう、ゆっくりと利用者と付き合っていくことが重要です。

(2)口腔ケア

利用者は、歯科医院に月一回の定期健診を受け、その際、医師、歯科衛生士から、歯と歯ぐきの間の食べカスを取り除くブラッシング法、電動歯ブラシや歯間ブラシの有効な使い方、義歯の着け外し方などの細かな指導を受けています。 以前にもこれらの口腔ケアの研修は実施しましたが、実際の介助で十分に活かされず、正しい介助方法で行っていないため利用者が痛い思いをしたり、義歯が破損するなどのこともあり、今回再度実施しました。

(3)補装具装着方法

新しく作り変えた補装具のつけ方を、実際に着けごこちや安定性などを利用者と介助者で試しながら、より良い着け方を研修しました。

(4)話し合い「自分がされていやなことは、しない」

介助のときに、利用者が「してほしくない」「やめてほしい」と感じることを、知らず知らずにしてしまっていることは、少なか らず起きてしまうものです。 例えば・・・ 食事介助のとき、ヘルパーが自分の左手をスプーンにそえて利用者の口元まで持っていき、てのひらに落ちた食べ物を お皿に戻し、再びスプーンですくって口に運んでいた。 利用者がトイレ中に、ヘルパーがトイレの奥の部屋にある掃除機をとるため、声掛けもせず突然トイレのドアを開けた。このようなことがありました。相手の立場に立って考えてみて、改めて介助者も、利用者も「自分がされていやなことは、しない」ということを心に刻み、介助にあたることを確かめ合いました。

友田 美代子

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ユニハイツ101号