2007年11月発行機関誌 No.006

HOME > 機関誌 > 2007年11月発行機関誌 No.006

クリスマス。皆さんはサンタさんに何をお願いするのでしょうか? らいふ・すけっとも市や行政へお願いしたいことがいっぱいあります。 でもサンタと違い、心の中で願っていても相手には届きません。 少しずつ声を出して住みよい社会を実現していきたいと思います。

みんなが安心して暮らせる社会

国会では、障害者自立支援法の見直しを言い始めています。 昨年4月から介助などサービスの提供を受けた障害者からその経費の定率(今は一割)を負担する制度になり、 障害が重いほど多くのサービスが必要なので、自己負担が増えるというものです。 この部分だけを大きく取り上げられて、しかも「撤廃」ではなく「凍結」といわれています。 介護保険との統合を前提とした考えであることを見抜いて行く必要があります。 先進諸国の中でも介護の問題を保険制度としている国は極わずかです。ほとんどの国が税金でまかなわれています。

介護の問題は、生活保護同様に国民がどのような状態であろうと 生活が送れるための生存権の問題ではないでしょうか?

たとえば、障害の無い人に1日でも誰かが「トイレに行くな!」とか「食事をするな!」と 強要したとしたら大きな人権問題でしょう。でも介助がいないと食事やトイレが出来ない障害者にとって 介護者がいないということは、「食事をするな!」「トイレに行くな!」と強要されているのと同じことでは ないでしょうか。でも仮に介助者のいない日があったとしても「かわいそうな人」という感想になりませんか。 なかなか人権が侵されていると考える人は少ないのではないでしょうか。 こうした意識を変えていかない限り、誰もが安心して暮らせる社会にはならないのではないでしょうか。

障害者自立支援法の中では、市に自立支援協議会の設置を義務付けられています。 この協議会では、地域での相談支援体制やネットワーク作りが話されます。 まだ加古川市では、協議会の構成メンバーが決定していません。 こういった協議会に福祉サービスを利用している障害当事者や提供している事業所、 そして親等の関係者はもちろんですが、地域の様々な人たちが参加していくことが大事だと思います。 そこで地域での諸問題が示されそれぞれの立場で話し合っていく場としていくことが、 みんなが安心して暮らせる社会づくりにつながると思います。

理事長 高田 耕志

はりま福祉ネットワークの姫路市交渉の報告

8月2日私達も加盟しているはりま福祉ネットワークと姫路市との交渉がありました。 障害当事者・保護者・関係者約30人が参加しての久々の交渉には、迫力を感じました。

ヘルパー派遣時間数の上限等10項目に渡る要望の中で、今私達の課題とする項目について報告をさせて頂きます。

まず前号で取り上げた「児童における移動介護の考え方」の見解をもとめました。 姫路市は、「子育て支援の部分と重なっている。ネグレクトの問題もあり、 権利を守る点から調整しながら考えていきたい。」と答えるにとどまりました。 移動支援の目的として、社会参加が含まれており、障害児にとっては、 健常児と同じような社会経験をつむことになります。年齢に応じて、親から離れて近くの公園で友達と遊ぶことや、 お菓子を買いに行くことから成長と共に行動範囲が広がっていくものです。 障害児にとってこういう経験が積めるようヘルパー派遣の保護者の同行義務を外すことをもとめました。

次にヘルパー派遣時間に上限(月に302時間)を設けている問題に移り、 一人暮らし等により302時間で足りない障害者に必要なだけの支給量の決定をもとめました。 今年の4月に厚生労働省の通達で「支給決定に当たっては、申請のあった障害者等について、 障害程度区分のみならず、すべての勘案事項に関する一人ひとりの事情を踏まえて適切に行うこと等 その取扱いに係る留意事項をお示ししているところです。

(中略)

個別に市町村審査会の意見を聴取する等により、 適切な支給量の設定にご留意いただきますよう、よろしくお願いいたします。」とあります。 加古川市では、この通知を受けて秋に審査会で審議され336時間(重度訪問306時間・移動支援30時間10月4日決定)に 増量決定がされようとしていることなどをあげて、障害者の厳しい生活実態などが話されましたが、 「厚生労働省の通達の勘案事項のなかに姫路市の基準も含まれるので、財政的状況もあって今のところ変えられない」 と身勝手な解釈をした上での答えを繰り返していました。

次に作業所利用負担についても姫路市は、「介護給付・訓練給付と並べる形で定率負担をお願いする」の一点張りで、 神戸・尼崎・明石・加古川を調べたが1割負担を取っていないことや市をまたがって通っている障害者や 作業所にしわ寄せが出ていることを訴えましたが、同じ答弁を繰り返すだけでした。

久しぶりの交渉なので、今後の課題ばかりが残る交渉でした。 この交渉をもとにはりま福祉ネットワークとしての重点問題をより多くの方と考えて行くために 2007年12月1日にシンポジウムを開きますので、ご参加を宜しくお願い致します。

※12月1日のシンポジウムは終了いたしました。

理事長 高田 耕志

(補足)ネグレクトとは、保護者などが子供や高齢者・病人などに対して、必要な世話や配慮を怠ること。

エッセイ:やったー!移動支援の支給量が増えた!

私事ですが、先日、移動支援の支給量が10時間から20時間に増えました。 そのときの経緯などをご報告させていただきます。

経緯

5年ほど前のことです。 移動支援を初めて申請したとき、市から「支給しても派遣できる事業所がないと思いますよ」 「ご家族の人でまかなえませんか?」などと言われ、断られました。「介助者(この場合、家族)がいる家庭では、 まずその介助者で対応し、どうしても対応できない所を支援しますので・・・」と、 月に1回程度の外出なら家族で協力し合って欲しいと、断られたように記憶しています。

それから1年後の支給量見直しの際に、もう一度、移動支援が欲しいと言ってみたところ、 月10時間の支給量が出るようになりました。

なぜ、このとき、あっさりと支給してくれたのか? あくまでも私の推測ですが、「前から要望があがっていた」という実績が欲しかったのかもしれません。

当面は月10時間でやりくりしていたものの、やはり行動範囲が広くなってくると10時間では足りなくなってきます。 神戸や大阪にショッピングへ行っただけで10時間近くかかってしまいますし、遠くの友達に会いに行ったり、 美容院に行ったり、映画を見に行ったり・・・と、まだまだお年頃の女性として月10時間の外出は到底足りなくて 当たり前です。

もちろん、家族や友人に同行を頼むこともあります。映画やコンサート鑑賞など一緒にいて楽しめるものは それでも良いのですが、ショッピングとなると、自分の買い物のためだけに相手の時間を費やしてもらうことに 気が引け、同行した人に気を遣ってしまいます。

自分の行きたい日に行きたい所へ行き、自分のやりたい事をやるためには、移動支援は必要なときがあるのです。

支給量が足りないときは、私は臨時支給をお願いしています。支給量を越えそうなときは前もって福祉課へ連絡し、 どういう理由で何時間使用し、何時間足りないのかを説明し、必要な書類を提出して臨時に支給してもらいます。

さて。移動支援を使い出してから、数年後の先日、いつものように電話で「月10時間では今月は足りないので、 必要な分の臨時支給を」とお願いしたところ、「ほぼ毎月、10時間を越えているようなので、月20時間に増やし、 その中でやりくりしていただくようにしてはどうですか?その方が金村さんの手間も、こちらの手間も省けますし。」 と言ってもらえたのです。

嬉しかった理由

このとき、私は嬉しかったのです。主な理由は以下の2つです。
ほぼ毎月、10時間を越えて、臨時支給をお願いしているという状況を把握してもらえたこと。
できれば支給したくないであろう市役所側から、支給量を増やす事を提案してもらえたこと。
はじめから「10時間では足りない、20時間にして欲しい」と言うこともできたと思いますが、 今回のように実績を作って、支援が必要なことを認識してもらう方法もあるのだと思います。 実績を残すためには時間も忍耐も必要ですが、今回の場合は臨時支給してもらえたので、 実績を残すゆとりがあり、結果、お互いが納得できる状態で支給量増量が実現したのだと思います。

金村 和美

ヘルパー活動から

あかんわけでもないし

ヘルパーMさん、いつものようにA君(5年生)と一緒に明石へ向かう電車に乗りました。 ところがその日は電車が混んでいて座る席がありません。A君は席を見つけようと見回しますが、 席がないので仕方なく座席の前にヘルパーと二人で立つことに。 ヘルパーMさんがつり革につかまりA君はMさんと手をつないでいます。しばらく外を見ながら立っていましたが、 なにやらもぞもぞと手を動かしています。見るとA君は鼻くそほじりを始めています。 その前に座っている親子が、いかにもいやそうな顔をし、いまにも文句のひとつも言いそうな雰囲気が漂っています。 Mさんは、なんだかとてもつらい悲しい気持ちになりましたが、なんとかしようとティッシュを取り出しA君に 「ティッシュで拭こうね」と声をかけました。 A君はティッシュを受け取ってなにもなかったかのように自分で拭きました。

らいふ・すけっとの「子供ミーティング」(子供を対象のヘルパーの)で、 子供さんの首振り、指しゃぶり、鼻くそほじりのことを話していた時のことです。

「どうしたらいいんやろ」「そんな汚いことされたらいやや」 「でもしゃぶった指をヘルパーの服につかないように気をまわしてくれる子もいるよ」 などが次々と出されていく中で、Mさんは「鼻くそほじりって、あかんわけではないし」とポツリと言います。 A君のことを振り返っての言葉です。 それをきっかけに「そうか、やめときというんではなしに、ティッシュでふいたらええんやね」 「そんな行動もきっと子供なりの意味があるかもね」などという話になりました。

行動をなんでもかんでも制止したり怒ったり叱ったりするのではなく、 子供にとって否定されるのではなく自然な流れで次の行動ができ、それを覚えていく、 そんな体験をしていくことが大切なことではないでしょうか。

何か違う

その日、B君(4年生)は、大好きなトイザラスでヘルパーと二人で過ごしていました。 そこでのB君は店の中をあちらこちらと、ほんとに自由に動き回っていました。 そんなB君の姿が、用事がすんで迎えに来たお母さんの目に入ったのです。 その様子を見たお母さんは「あれー何か違う!こんなに自由に動き回っている!」

「私と一緒のときは2時間近くもトイザラスで遊ぶことはないのに。 私がついついもう行くよと言ったり、止めさせたりしてたのかな」

「私がいつも一緒にいるのがいいと思ってやってきたけど、 これからは少し違うほうがいいのかな」と感じたのです。

後日、お母さんはこのことを「私もちょっと考えてるんです」 と子供の成長を確かめるかのように話してくれました。

私はこの話を聞いてなんだかとてもうれしくなり、お母さんの顔をじーっと見てしまいました。 そしてすぐに、そのときのヘルパーさんにお母さんの話を伝えると、にっこりしながら 「はい、この仕事は楽しいしやりがいがあります」と言ってくれました。

所長 友田 美代子

事務局より

一年間の活動内容報告
役員会及び理事会の開催(月1回)
ヘルパー研修(1回) / ミーティング(随時)
はりま福祉ネットワーク 参加

〒675-0023
加古川市尾上町池田387-3
ユニハイツ101号